横浜のメガネ店アイケアシステム

▲遠近両用メガネの事例1 (不同視の方)▲

上下プリズム差の少ない不同視・遠近両用眼鏡作製の事例

E・Aさん(昭和14年生まれ/女性)

平成13年8月当店にて作製したメガネが古くなったのと、遠くが少し見にくくなったので新調したいと言って来店された。他店で購入したが使えなかったというメガネを3本持ってきて、その中のフレームを使って免許更新用のメガネも欲しいとのこと。念のため度数を調べてみた。
1本目のメガネ
R= -2.50 
L= -6.00  
2本目のメガネ
R= -4.00 
L= -6.00C-0.50AX90
3本目のメガネ
R= -4.75 
L= -8.50であった

現在使用眼鏡(平成13年8月当店作製)は
R= -3.25C-0.50AX90 
ADD2.50サミットプロ1.6 累進帯長14mm(eyepoint水平ライン4mm-up)
L= -5.25
非球面単焦点1.6(芯取り水平ライン)

であり当時の検査記録の詳細がなかったので、改めて最良な度数及び芯取り位置を検討する事にした。

片眼遮蔽屈折検査

vd=(1.0×-3.25c-1.25ax100)
vs=(0.7×-8.00c-1.25ax 75)

近見片眼遮蔽屈折検査
「半田屋商店発行 ひらかな万国式近点検査表 医学博士 中村 康 撰」を眼前30cmに持っていただき最高視力を得る最も、マイナス寄りの度数を求めた。

nvd=(1.0×-0.75c-1.25ax100)
nvs=(0.5×-5.50c-1.25ax 75)

遠見十字テスト:4△〜5△外斜位
遠方上下分離法:2△外斜位
近方上下分離法:5△外斜位
不等像視:コの字テスト左眼で見た方が線1/2本分約3.5%小さい
融像幅:分離9△BASE-IN〜14△BASEOUT(少し狭い)
    回復6△BASE-IN〜 2△BASE-OUT(狭い)
外斜位があり且つ融像幅が狭いもののプリズム処方の対象にはならないと判断した。左右差が4.75D程あるが不等像視は3.5パーセントくらいなのでその事によるメガネの掛けにくさはあまり心配ないように思えたので、近方視したときに生じる上下プリズムの左右差を以下の3パターンで考えてみた。

1. 完全矯正度にて両眼遠近累進で作製したとき
R= -3.25c-1.25ax100    add2.50
L= -8.00c-1.25ax 75    add2.50

2. 左の遠用度数を1.00D加入度も1.00D落とし両眼遠近累進で作製したとき
R= -3.25c-1.25ax100    add2.50
L= -7.00c-1.25ax 75    add1.50


3. 左の遠用度数を2.00D加入度も2.00D落とし両眼遠近累進で作製したとき
R= -3.25c-1.25ax100    add2.50
L= -6.00c-1.25ax75    add0.50


近用部分の上下プリズム量の求め方は、HOYAテクニカルサポ-トより垂直方向の遠用度数と近用度数の中間値を使いPrentice(プレンティス)の公式で近似値を求める方法があると聞き、それで計算する事とした。累進レンズは、上下プリズム量の左右差が少なくなる累進帯長が短い11mmを採用することとした。

右の垂直方向の遠用度数:(3.25+1.25SIN二乗(100-90))
右の垂直方向の近用度数:(0.75+1.25SIN二乗(100-90))となり、その差をとるため乱視部分は消去されるので考慮しなくてよいようだ。

1の場合( F:遠方 N:近方)
右:F= -3.25D N= -0.75D 中間度数= -2.00

Nプリズム量=(2.00×11)/10=2.20
左:F= -8.00D N= -5.50D 中間度数= -6.75 
Nプリズム量=(6.75×11)/10=7.43近用部分の左右差が約5.23△

2の場合

右:F= -3.25D N= -0.75D 中間度数= -2.00
Nプリズム量=(2.00×11)/10=2.20
左:F= -7.00D N= -5.50D 中間度数= -6.25
Nプリズム量=(6.25×11)/10=6.88近用部分の左右差が約4.68△

3の場合

右:F= -3.25D N= -0.75D 中間度数= -2.00
Nプリズム量=(2.00×11)/10=2.20
左:F= -6.00D N= -5.50D 中間度数= -5.75
Nプリズム量=(5.75×11)/10=6.33近用部分の左右差が約3.75△


どれも近方視の時の上下プリズム差が結構あるため、遠方も近方も上手く行くのは難しそうなので、他の方法として右レンズは加入度2.50の遠近両用を使用(遠方、近方とも働くように)。左レンズは単焦点を使用(近方の方がより働くように)した場合を以下の度数で考えてみた。
R= -3.25c-1.25ax100  add2.50
L= -5.50c-1.25ax75
その前に累進レンズ(-3.25c-1.25ax100 add2.50)の薄型加工に用いられるアレジェ加工(プリズムシニング)を施してあるのとそうでないものの比較検討をしてみた。(HOYA製のプリズムシニングは遠用度数が+でも−でもBASED DOWNが入るとのこと)

1. アレジェ加工をしている場合の近用部の上下プリズム量

アレジェ加工の場合は、加入度の約半分の1.25プリズムのベースダウンが幾何学中心に生じる。プリズムゼロ地点はプレテンスの公式より 1.25=(2.00×m)/10これを計算すると幾何学中心の上方6.25mmとなる。累進帯長11mmなので近用部でのプリズム量=2.00×(2.25+11)/10=2.65△BASE-DOWNとなる。

2. アレジェ加工をしてない場合の近用部の上下プリズム量

eyepointにてゼロプリズムなので、下方11mmに於けるプリズム量は2.00×11.00/10=2.2△BASE- DOWN

1.と2.を比較してみると0.45△だけ1の方のBASE DOWNが強いことがわかった。それで左右のプリズム差を少なくするためには、1のアレジェ加工をしている方が良いと判断した。

左右の上下プリズムの差を(縦軸をプリズムジオプトリー(Y)横軸を光軸からの距離(X)としたグラフを作成し検討してみた。
プレンティスの公式 △=D×M/10よりレンズの度数Dが一定ならプリズム量(△)と光軸からの距離(M)は関数となり式△=Dx/10+bで表せる。 
R= -3.25c-1.25ax100  add2.50のアレジェ加工付き累進レンズ(垂直方向D=2.00)
傾きは2/10で点(0,-1.25)(6.25,0)を通る。f(x)=2X/10-1.25(-7≦x≦6.25)の式1で表される。 
L= -5.50c-1.25ax75の単焦点レンズ(垂直方向D=5.58)傾きは5.58/10でY軸上の交点bは0となるf(x)=5.58X/10の?式で表される。グラフより(遠方視を最重視した場合)累進レンズのeyepointにて上下プリズム差をなくすには単焦点レンズも同地点で0.45△BASE-DOWNが生じる方法を選べばよいとわかる。?式を平行移動して(4,-0.45)を通る線を引く(?-1)※その時近用部でプリズムの差が3.938(3.938=6.588-2.65)となる。(近方視を最重視した場合)累進レンズの近用部分で上下プリズム差をなくすには、単焦点レンズも同地点で2.65△BASE-DOWNが生じる方法を選べばよいとわかる。2式を平行移動して(-7,-2.65)を通る線を引く(?-1)。※ その時遠用eyepoint4mmにてプリズム差が3.938となる。近方での比較的良好な両眼視を念頭に置いているので、近用部での上下プリズム差を少なくする事にし比率を1:2とした。つまり(近用部:eyepoint)=(1.313:2.626)とした。図より水平ライン上で-0.056△(0.56BASE-DOWN)(0.56=2.682-2.626)が生じるような方法を選ぶと良いと解る。偏心対応では0.1mmだけ水平ラインより上に芯取りをすると良いのがわかる。今回の処方と芯取りは、

R=-3.25c-1.00ax100  add2.50 (1.67累進帯長11mm)
L=-5.50c-1.00ax75         (1.70非球面単焦点)
右eyepointを水平ラインの上4mmとし、左の芯取りは水平ラインの上0.1mmとした。左非球面レンズでもさほど問題ないと判断。(光軸をずらしプリズム効果を出す事)

〈コメント〉先日お渡ししたところ、近くも遠くも楽に見えるとのことで反応は良かった。前回のメガネの調子がよかったのは裏付けられたたが、その当時累進帯長11mmのレンズまでは頭が回らなかったところは反省すべき点でした。以上、不同視=不等像視とは限らない方の遠近両用メガネ作製の事例でした。